lw´‐ _‐ノvシュルレアケーキのようです 第一話
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3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:51:40 ID:lOZFg2Zg0 [1/6]
第一話「あーす」


 町は依然、カニが音も立てずに砂糖雫を落とす時と等しく、月下のまま静寂であった。
書物の呪いは、人々から万物の創生を飲み干し、数多のフルーツは実のまま腐ってゆく。

 古来から伝わる秘法をイワシの死体に宿し、私たちは沈む時をこのまま楽しむことにした。
夜は正方形であり、私たちの頭上の底を緩やかに天体が廻ってゆく。

lw´‐ _‐ノv「匂いに慣れることを、順応というんだって」

(゚、゚トソン「そうですか」

(#゚;;-゚)「お空、きれい……」

lw´‐ _‐ノv「そのうち、この景色にも慣れてしまうのかな」

(゚、゚トソン「そうですね」

(#゚;;-゚)「お星さま、きれい……」

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:52:49 ID:lOZFg2Zg0 [2/6]

 でぃは俯きながら星を睨み、トソンは上着のフードを被ったり脱いだりしていた。
あるいは術の放つ異臭に耐え難い様子であったが、二人の血管は浮き出ていない。

lw´‐ _‐ノv「見えることを、撫で撫でしてあげたいね」

(#゚;;-゚)「うん」

(゚、゚トソン「ええ。ですが僕は早くも飽きつつありますよ」

lw´‐ _‐ノv「まさか……」

 一体誰がたなびく徒し煙や、太陽に抵抗する窓ガラスを見慣れるというのだろう?
自然と目が見開いて心を満たす光景の多くを、いつか蔑むようになるのは誰だというのだろう?

 それは、私たち自身に他ならない。

 やがて目にした何もかもが、微かに空いた指の隙間からさらさらと零れ落ちてしまう。
キッチンテーブルの上に綺麗に食器だけを並べ、ほこりが砂として積もってゆくのだ。

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:53:43 ID:lOZFg2Zg0 [3/6]

(#゚;;-゚)「私は何も見たくはないのに」

(#゚;;-゚)「それでも見ていたい」

 文字が読めないほど紙焼けした本は、自己を肯定するのが困難だ。
でぃは交わしたそばから離れ、離れたと思うと交わしてゆく。

lw´‐ _‐ノv「うん」

(゚、゚トソン「……」

 何も気にする必要はないよと言っても、それは内側に鱗を残すだけだ。
矛盾を内包した木箱は自分で壊さなければ、幾度となく生産されてゆく。

 いつかテラスに置いたままのサングラスは、何かの暗示のように太陽に溶けていった。
飲みかけのジャムコーヒーの味を苦くさせたのは、その記憶に過ぎない。

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:54:28 ID:lOZFg2Zg0 [4/6]

(゚、゚トソン「少し、歩きましょうか」

(゚、゚トソン「時間の彼方まで、まだ猶予はありますよ」

lw´‐ _‐ノv「いいよ」

lw´‐ _‐ノv「でぃは?」

(#゚;;-゚)「……空が見えるなら」

 私たちが眠ることや起きること、それらを何も気にしないなら物音はしないはずだった。
私は夏のあたたかい風であり、その一歩を踏み出す。

lw´‐ _‐ノv「よっと……」

 ふわり、とも聞こえなかった。
でぃもトソンも同じく、見えないほどに風であった。

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:55:27 ID:lOZFg2Zg0 [5/6]

lw´‐ _‐ノv「なんとなく子供のころを思い出した」

(#゚;;-゚)「そういうこともある……」

(゚、゚トソン「ええ」

 前を行く二人の肩越しに、細菌や揮発した建物の芳香が明滅してゆく。
ネオンめいた星々と香る光の流動に、彼女たちは何を思うのだろう。

(゚、゚トソン「キリン見たことあります?」

(#゚;;-゚)「あるよ」

(゚、゚トソン「あんなに背が高いと、肩こりそうですよね」

(#゚;;-゚)「そうかな」

lw´‐ _‐ノv「……」

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 20:56:14 ID:lOZFg2Zg0 [6/6]

 フレアスカートと、膝までのクロップドパンツ。
そこから覗く二種類のふくらはぎが、道々に蚕の半影を作り出す。

 でぃのアーモンド形のふくらはぎは、天然が保つあの不透明さだった。
それに比べてキルギス産の細いタバコは、バターで炒めて色を付けるべきだと思う。

lw´‐ _‐ノv「トソン嬢は不健康?」

(#゚;;-゚)「うん」

(゚、゚;トソン「あなたたちが何故、僕の体を知りうるのですか?」

lw´‐ _‐ノv「配色学に基づいて」

(#゚;;-゚)「痩せすぎだから」

(゚、゚;トソン「はぁ……」

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:04:45 ID:u6u00BgA0 [1/6]

 町が長い行列を終え、入り江から遠洋へとかすかに変化の兆しを見せる。

 もともと感情の少ない場所は、先の見えない洞窟のようにほの暗い。
秘法以前は何処も彼処も、無関心を装う亡霊が俯いて行き来していた。

 仮に耐え切れぬ不平を誰かが叫ぼうとも、足音が鳴らす拍手以外は何も聞こえやしない。

 そして異質者が去ってから、彼らはヒソヒソ声で喋るのだろう。

从 ∀从「……キチガイでしたの?」

( 、 *川「分かりませんわ」

( 、 *川「それよりあのお店、リニューアルしたみたいですわよ」

从 ∀从「あら、知らなかったわ……」

 そんな会話が容易に想像出来る街路だった。

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:05:42 ID:u6u00BgA0 [2/6]

 無人の大通りをふらふら進み、私たちはふと、雑貨屋の前で足を止めた。
立て看板に記された、「耳栓あります」という文字が目を引いたのだった。

(゚、゚トソン「……耳栓あります」

lw´‐ _‐ノv「アイマスクもあります」

(゚、゚トソン「盆栽あります」

lw´‐ _‐ノv「ロバもいます」

(゚、゚トソン「それは……、どうでしょう?」

(#゚;;-゚)「盆栽も無いと思う……」

 窓に沿って並べられた紅茶の缶やがらくた品は、思い思いの果てを満喫している。
けれど木製のドアの向こうからは、やはり凝縮された闇が染み出していた。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:06:34 ID:u6u00BgA0 [3/6]

lw´‐ _‐ノv「入ってみる?」

(゚、゚トソン「ええ、面白そうですね」

(#゚;;-゚)「……」

 でぃは星との別れを名残惜しそうにしていたが、自分でそれを認めたくないのだろう。
コクンと頷くと、先頭を切ってドアに手を掛ける。

 引き潮が群青や細砂を連れて行き、湿った衣類の音階を並ばせた。

 店内は、サモア諸島が逆さまに吊るされていて奥まで見渡せない。
また、古びたコウモリが、所狭しと棚やテーブルに腰掛けている。

 果たして現実と私たち、どちらが逆さなのか分からなくなりそうだ。
けれど誠実さが時として自己欺瞞となるように、私たちが常に正しくいられるわけではない。

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:07:24 ID:u6u00BgA0 [4/6]

(゚、゚トソン「よく見かける品々ばかりですね」

(#゚;;-゚)「うん……」

lw´‐ _‐ノv「これは何だろう?」

(゚、゚トソン「そっと触れてみましょう」

 トソンが円錐形の倒錯した何かに手を伸ばした、そのときだった。
ピアノを力一杯に叩き鳴らしたような音が、奥の方から響いた。

lw´‐ _‐ノv「でぃちゃん今の音、なんだろう?」

(#゚;;-゚)「愚見だけど……、誰かいる?」

(゚、゚トソン「ちがいますよ、そんなわけありません」

(#゚;;-゚)「はっきりそう決まってはいない」

(゚、゚トソン「なかへ向かってみます?」

(#゚;;-゚)「いいよ」

lw´‐ _‐ノv「よし……」

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:08:12 ID:u6u00BgA0 [5/6]

 縮尺されたポリネシアや緑黄の箒の隙間を、頭を低くして奥へと移動する。
衣類の横に熱帯魚のエサ、その下の棚に灰皿と、乱雑な歓迎会が私たちを迎えた。

 どこかで見慣れた品々も、配置の不安定さからか新鮮に感じる。
都での生活に疲れ果てた召使いは、嗚咽と共に健全な身体に帰ってゆく。

lw´‐ _‐ノv「お弁当箱がこんなところに」

(#゚;;-゚)「綺麗なペンダント……」

(゚、゚トソン「耳栓は一体どこにあるのでしょうね」

 年代物のレジが置かれたカウンターを通り、布で仕切られた内側へ進んだ。
そこには、これから棚に並ぶであろう商品も、生活のかけらも何も無かった。

 六畳ほどのまっさらな空間に、二階へと続く階段が伸びている。
ただ、その鉄製の階段は上段の何段かを残して、あとは崩れていた。

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:09:13 ID:u6u00BgA0 [6/6]

lw´‐ _‐ノv「これは……」

(゚、゚トソン「ああ、分かりました」

(゚、゚トソン「僕たちが聞いたのは、朽ちた階段の落ちた音でしょうね」

(#゚;;-゚)「……かもしれない」

lw´‐ _‐ノv「……」

 けれどその推測はどうも外れていたらしい。先の音が、もう一度鳴った。
その不快な音は崩れた階段の先、二階から響いている。

(#゚;;-゚)「はずれ」

(゚、゚トソン「むむっ……、どうも上から聞こえますね」

(#゚;;-゚)「そうみたい」

lw´‐ _‐ノv「うん」

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:19:33 ID:TAZs8yP.0 [1/7]

 意識を耳に集中していた私は、いつしかエスカルゴを煮ていた。

 殻から取り出して内臓を除いたエスカルゴを、薬味の効いたブイヨンで煮る。
とろ火に掛けた鍋がコトコトと音を立て、豊かな風味が広がる。

 カグイユのブイヨンが完成しても鍋は音を立て続け、私は困惑した。
闇雲に現れた幻は鏡であり、その曇った表面が吐息によってあらわになる。

lw;´‐ _‐ノv「違う、外で雨が降ってる……」

(゚、゚;トソン「えっ? 気付きませんでした」

(#゚;;-゚)「溶ける魚……」

(゚、゚;トソン「早く戻らないと」

lw´‐ _‐ノv「うん」

(#゚;;-゚)「……」

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:20:22 ID:TAZs8yP.0 [2/7]

 絶対的な来訪者が無条件を示すのは、歯車が彼らの側にあるためだった。
妖艶がぞっとする善意を、割れた蛍光灯を後ろ手に隠したまま薄ら笑いを浮かべる。

 秘法を宿したイワシは感覚を泳げるが、酸性雨には弱い。
魚が溶けてしまえば、私たちはこの奇異世界から永遠に帰れなくなってしまう。

(゚、゚トソン「気になりますが、音の正体は今度ということで」

(#゚;;-゚)「残念……」

lw´‐ _‐ノv「行こう」

(゚、゚トソン「ええ」

 急いで雑貨屋を出ると、空は苔むした墨のような雲で覆われていた。
けれど私たちが屋外で目にしたのは、眩しいほどの光だった。

 雨の一粒一粒が、ピンクやブルーと自在に輝きを放っている。

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:21:19 ID:TAZs8yP.0 [3/7]

 水滴を浴びて七色にきらめく立体と化した建物、溶け合った絵の具の発光する水溜り。
思わぬ光景に、私たちは息を止めて呆然とする。

lw´‐ _‐ノv「……」

(#゚;;-゚)「……」

(゚、゚;トソン「……なんて世界なんでしょう」

 でぃは空を見上げて泣いていた。顔に落ちた雨粒が、涙の跡で薄くなる。
どしゃぶりの虹に感動したのか、星が隠されたせいなのか、私には分からなかった。

(゚、゚トソン「何時までもこうしていられませんね……」

lw;´‐ _‐ノv「もう溶けかかってるかも」

(#゚;;-゚)「走るのか」

(゚、゚トソン「ええ、そうしましょう!」

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:22:21 ID:TAZs8yP.0 [4/7]

 不慣れな光雨のなかを私たちは走り出した。
大通りをぬけた先の広場へ、魚が溶けきるまでに辿りつかなくてはならない。

 雨はしだいに強くなっている。

 一歩進むたびに全身が重くなる、呼吸が激しくなる。
今にでも腕の振りを止めて、足を動かすのをやめて、立ち止まりたくなる。

 小さな悲鳴が聞こえて振り返ると、でぃが足を滑らせて倒れていた。

lw´‐ _‐ノv「でぃちゃん!」

(# ;;- )「いいから……、早く……」

(゚、゚;トソン「イワシが溶けてしまいます! 行きましょう!」

lw;´‐ _‐ノv「え? う、うん……」

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:23:13 ID:TAZs8yP.0 [5/7]

 私たちは流れる大気などではなかった。
泥のような体で走る、乾いた土のように脆い逃走者だった。

 もしも秘法が無ければ、これが単なる日常ならば、きっともう諦めていただろう。
何か救いがあるかも知れないという、微かな希望にすがっているだけだった。

 けれど人生が思うようにいかないのは、どこにいても同じだった。
広場に着いたとき、確かにマンホールの上に置いたイワシはもう消えていた。

(゚、゚;トソン「……」

lw;´‐ _‐ノv「……」

(゚、゚;トソン「一生、ここから……」

lw;´‐ _‐ノv「な、なんとかなるよ」

(゚、゚;トソン「……だと、いいんですが」

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:24:19 ID:TAZs8yP.0 [6/7]

 苦しそうな顔をしながら、でぃが私たちに追いついた。
とっくにわかっていたのだろう、彼女は何も聞こうとしない。

lw´‐ _‐ノv「でぃちゃん……、だめだった」

(#゚;;-゚)「はは……、あはは……」

(゚、゚;トソン「……」

 注意深く行動していれば、こんなことにはならなかった。

 地面から数十センチ上を、無数のピアノ線が張りめぐらされている。
私たちはそれと知らずに、帰るための靴を八つ裂きにしてしまったのだろう。

 この先どうしたらいいのか、私たちは何も分からない。
どうすることも出来ない世界に、ポツンと取り残されてしまった。

 やたらカラフルな雨にずぶ濡れになりながら、ぼんやりとその場にたたずむ。

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/07/07(土) 21:25:29 ID:TAZs8yP.0 [7/7]

lw´‐ _‐ノv「……」

(゚、゚トソン「……」

(#゚;;-゚)「……」

 心は不安で溢れているのに、どうして景色はこんなに綺麗なのだろう。
降りしきる一滴一滴が七彩に輝くなか、私は気付く。

lw´‐ _‐ノv「ああ、景色がやがて腐ってゆくのは」

lw´‐ _‐ノv「いつまでも前に進まなければならないからだ」

(#゚;;-゚)「……うん」

(゚、゚;トソン「ええ……」


第一話おわり

づく続くつ
06/12|現行コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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