lw´‐ _‐ノvシュルレアケーキのようです 第二話
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32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 19:56:36 ID:8dzeO.lE0 [1/19]
第二話「リタイア」


 秘法のイワシは溶けてしまい、ここから元の世界に帰る手立てを失った。
しとしと降るのはまばゆく光る雨粒だが、心のなかはどうしようもなく暗かった。

 普段見ることのない断面は、想像もしない異質な夢のようだった。
何も起こっていないのに、地面が揺れているように感じる。

(#゚;;-゚)「……ここから」

lw´‐ _‐ノv「うん」

(#゚;;-゚)「ここから、出られる方法がある」

lw´‐ _‐ノv「ほんとうに? どうやって?」

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 19:57:39 ID:8dzeO.lE0 [2/19]

(゚、゚トソン「ちょっと待ってください」

(゚、゚;トソン「それって、まさか、……そういうことじゃないですよね?」

lw´‐ _‐ノv「えっ」

(#゚;;-゚)「……」

 虚無主義の私たちは、神様がいないことをなんとも思わない。
けれど、自分自身の存在すら亡くすことに、果たして耐えられるだろうか。

 永久に続く怨恨が肉を彫刻するように、私たちの時間もまた限られている。
出口の無い迷宮から逃れる道は、今のところ一つしかなかった。

(゚、゚;トソン「冗談は止してください」

(#゚;;-゚)「そんなに冗談でもない」

34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 19:58:49 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「落ち着いて考えよう」

(゚、゚トソン「そうですよ、しっかりしてください」

(#゚;;-゚)「……」

lw;´‐ _‐ノv「でぃちゃん、諦めたらだめだよ……」

 そう言うものの、建設的なアイデアは何一つ思い浮かばない。
私たちは、ただ無駄に決断を先延ばししているのだろうか?

 盲目のオゾン層は、何を頼りにパリ祭への道を閉ざしたのだろう。
田舎者の私たちは地図すら持たずに道に迷い、もはやどこにも進めない。

 どこかの磁石に頼るあてもなく、砂鉄は雨に埋もれて錆びてゆく。
空を飛び回る嫉妬が、遥か上空から失敗を見下ろしてせせら笑う。

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:00:14 ID:8dzeO.lE0

 その磁場から私たちを引き離したのは、トソンの比較的まともな提案だった。

(゚、゚トソン「……とりあえず、どこか屋内に入りましょう」

(゚、゚トソン「夏とはいえ、風邪をひいてしまいます」

lw´‐ _‐ノv「うん……」

(#゚;;-゚)「……」

 私たちは、スーパーマーケットで一夜を過ごすことにした。

 スーパー荒巻は二階建ての大型小売店で、一階に食料品、二階には衣類や家具と大抵の日用品は揃っている。
この雨のなかでは経年劣化が目立つ外観も、ラスベガスのカジノ街にすら劣らない。

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:01:07 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「誰もいないと、スーパーはこんな物音がするんだ……」

(#゚;;-゚)「卵、冷えてる」

(゚、゚トソン「ええ、電気は通っているみたいですね」

(#゚;;-゚)「うん」

 店内の照明は落ちていたが、ガラス戸から差し込む雨と衣服に染み込んだそれのため、中の様子は一応分かる。
濡れた靴によって残された足跡が光るのを眺める。

(゚、゚トソン「事務室かどこかで、まず明かりをつけましょう」

lw´‐ _‐ノv「分かった」

 冷蔵ケースのうなる低音があちこちで重なりあって、おかしなベースラインを奏でている。
バーコードの縦線もよろめきそうな旋律だったが、真夜中のスーパーはどこもこうなのかもしれない。

37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:02:03 ID:8dzeO.lE0

(゚、゚トソン「シリアルもありますし、しばらくは安心ですね」

(#゚;;-゚)「なんでもあるのに、どうしてシリアル?」

lw´‐ _‐ノv「うん、お米もステーキ肉もあるよ」

(゚、゚トソン「むむっ、長期的な見通しで言っただけです」

(゚、゚トソン「……そう言うなら、僕は一番高価なワインを開けますからね」

 日々のフライパンは、息が詰まるようなネズミの色に染まり、誰しもその裏面を見たくはない。
そこにあるのは二通りの救い方と、一つの無視であり、時折洗うことが最も適切な選択だ。

 トソンは一見、冷静で感情に乏しく見えるが、三人の中のムードメーカーであった。
彼女の言葉はしばしば私たちを和ませ、気持ちに余裕を持たせる。

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:03:12 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「だけど勝手に商品をとっていいのかな……」

(#゚;;-゚)「だめだよ」

lw´‐ _‐ノv「そう、……だよね」

(゚、゚トソン「……あの、ゾンビ映画見たことあります?」

lw´‐ _‐ノv「……」

(#゚;;-゚)「……」

(゚、゚トソン「……」

 つまり、私たちはゾンビで、ここにある食品は人間ということだろうか。
手足の生えたスイカや白菜が慣れない歩行で逃げ惑い、頭のなかで私はそれを追う。

 トソンの例えはいまいち難解だったが、私たちは無言で頷き合い、それぞれ夜食となるものをカゴに詰めた。

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:04:18 ID:8dzeO.lE0

 死んだふりの鮮魚を横目に事務室に押し入り、店全体の照明をつける。
菓子パンを入れたカゴを机に置くと、濡れた服を着替えるべく私たちは二階へ向かった。

 衣類のコーナーは専門店ほど種類はないものの、季節柄のものは一通り揃っていた。
口に含んだチョコを舌で溶かしつつ、何を着ようか物色する。

(゚、゚トソン「あの、シュー」

lw´‐ _‐ノv「うん?」

(゚、゚トソン「さっそく着替えますので、あっちの方見ててください」

lw´‐ _‐ノv「どれを着るか、もう決めたの?」

(゚、゚トソン「ええ、僕はそんなにこだわらないので」

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:05:36 ID:8dzeO.lE0

 見るとトソンは、グレーのギンガムチェックのシャツと、ベージュのカーゴパンツを手にしていた。
なかなかのボーイッシュな選択に、思わず笑みがこぼれる。

lw´‐ _‐ノv「キャスケットの帽子が似合いそう」

(゚、゚トソン「ですから、そっちのほう……」

lw´‐ _‐ノv「あれ? でぃちゃんは?」

(゚、゚トソン「そういえば……」

 何が起こるか分からないことを、つい失念していた。
沸騰した不安は試験管を曇らせ、すぐさま沈黙の硫黄に様変わりする。

 Tシャツの掛かったハンガーラックの向こうから、カーテンの擦れる音が聞こえた。
慌ててそちらの方を見ると、足音とともにすっかり着替えたでぃが現れた。

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:06:44 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「良かった……」

(#゚;;-゚)「着替えた」

(゚、゚トソン「試着室あったんですね……」

(#゚;;-゚)「タオル、そこに棚にある」

(゚、゚トソン「ありがとう、シューも早く選んでくださいね」

 そう言ってトソンは試着室の方へ向かっていく。

lw´‐ _‐ノv「気を付けてね」

(゚、゚トソン「へ? 覗き見する人なんて、シューぐらいしかいませんよ」

 どうも話しが食い違っていたが、私の考えすぎなのかもしれない。

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:07:33 ID:8dzeO.lE0

 濡れた髪をタオルで拭きながら、でぃがそばに近づいた。
薄い青のワンピースは彼女によく似合っていて、どこで見つけたのか新しいサンダルまで身に着けている。

lw´‐ _‐ノv「プールから出たあとみたい」

(#゚;;-゚)「うん。ここだと少し肌寒いけど」

lw´‐ _‐ノv「戻ったら泳ぎに行こう……」

 サイダーの透明な泡を、ガードレールのカーブに沿って見つけてゆく。
私も適当にTシャツと動きやすそうなハーフパンツを選び、その場で着替えた。

(゚、゚トソン「さて」

(゚、゚トソン「服も着替えて、心機一転といったところでしょうか」

(#゚;;-゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「よ、よし!」

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:08:52 ID:8dzeO.lE0

(゚、゚トソン「でぃ、これから弱音を吐くのは、お互い止めませんか」

(#゚;;-゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(#゚;;-゚)「約束は出来ないけど、……分かった」

(゚、゚トソン「ええ。なにがあろうと帰る方法を見つけましょう」

(#゚;;-゚)「……うん」

(゚、゚トソン「僕はまだ、現世に未練たらたらなんですからね……」

 絵に描いた宝石も、その対比である現実も、好きな歌を口ずさむことに変わりはない。
私たちにとって大切だったのは、まさにそのことに気付くことだった。

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:09:48 ID:8dzeO.lE0

 錆びた錠前はさらさらと風に崩れ、箱の中からすっかり忘れていた気持ちが飛び出してくる。
前に進み続けろ、という景色の意思は、目をつぶったまま歩いていては果たされないのだ。

lw´‐ _‐ノv「思い詰めて」

lw´‐ _‐ノv「苦しまなくてもいいことで、苦しんでたような」

(#゚;;-゚)「理性的に考えると、そうだったのかもしれない」

lw´‐ _‐ノv「無事に帰れるよ、きっと」

(゚、゚トソン「願わくはそうありたいですね」

 事務室に戻ってこれからのことを話しているうちに、疲れきっていた私たちはいつしか眠りについた。

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:10:32 ID:8dzeO.lE0


(゚、゚トソン「起きてください、シュー」

(#゚;;-゚)「朝だよ」

lw´‐ _‐ノv「う、うん? あ、おはよう……」

(#゚;;-゚)「おはよ」

(゚、゚トソン「先ほど外を見てきたら、綺麗に晴れていましたよ」

 起きるのが一番遅かったのは、どうやら私らしい。時計を見ると、もう開店時刻を過ぎている。
机の上には朝食の名残と思しきお皿と、コーンフレークに牛乳パック、蓋の開いたヨーグルトが載っていた。

 密かに早く起床して、新品の炊飯器で炊いたご飯を二人に振舞おうと思っていたのだが叶わなかった。
仕方なく、イチゴ味のシリアルに牛乳をかけて食べる。

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:11:35 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「これはこれで、うん……」

(゚、゚トソン「それでですね、驚いてください、シュー」

lw´‐ _‐ノv「んっ? ……んん!?」

(゚、゚トソン「まだ早いです」

lw´‐ _‐ノv「うん……」

(#゚;;-゚)「……」

(゚、゚トソン「変わったことがあるんです」

 花が咲く代わりに、猫じゃらしの生えた木が声を掛ける。
起きた者に目覚まし時計は要らないことを、彼らは知らない。

 道路のくぼみには昨日の雨がいくらか残っており、太陽と一緒に輝いている。
トソンの言っていたことは、スーパーを出てすぐに分かった。

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:12:24 ID:8dzeO.lE0

 必ず私たちの視界のどこか一ヶ所が、そこだけ光を吸収しているかのごとく暗くなっていた。
ビルの何階かが、他の階に比べて明確に別の黒みを帯びていたり、少し歩くと道路の一角が暗くなっていた。

lw´‐ _‐ノv「遮るものは何もないのに、どうしてだろう?」

(#゚;;-゚)「染み出た」

lw;´‐ _‐ノv「な、何が?」

(#゚;;-゚)「……」

lw;´‐ _‐ノv「……」

 19世紀のある監獄は収容所が円形に建てられ、その中央に監視塔が立っていたという。
囚人部屋は絶えず照らされ、逆に監視塔は暗いため、受刑者はいつどんな人に見られているのか分からない。

 私はその逸話を思い出し、目の前の部分的な暗闇が、まるでそこから何かに監視されているようで不気味だった。
その何の影でもない暗闇に、トソンが近づいていく。

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:13:10 ID:8dzeO.lE0

lw;´‐ _‐ノv「あ、危ないよ」

(゚、゚トソン「いえ、見ていてください」

 道路の端の暗がりに、トソンが足を踏み込もうとした時だった。
その場が急に光を取り戻し、暗闇の空間は道の先に移っていった。

lw´‐ _‐ノv「どういうこと?」

(゚、゚トソン「道しるべですよ、この先にきっと出口があるはずです」

(゚、゚トソン「追っていきましょう」

(#゚;;-゚)「いいよ」

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/08/03(金) 20:13:58 ID:8dzeO.lE0

lw´‐ _‐ノv「うーん……」

 陰鬱そうな暗闇が道しるべというのは、どうなのだろうか。
たどり着く先は、あるいは悪意の巣窟かもしれない。

 けれど私は、目の前の景色を、つまり自分がどこにいるのかを楽しむことに決めたのだ。
これが先に進むための兆しなら、追わない手はない。

lw´‐ _‐ノv「よし! 分かった」

(゚、゚トソン「決まりですね、いざ出口へ!」

(#゚;;-゚)「うん」


第二話おわり

づく続くつ
06/12|現行コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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