ノハ#゚⊿゚) ヒートは全力を尽くすようです!!  1スレ目
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3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:43:07.72 ID:0WiqQgRvO
Prologue


たくさんの機械が置かれた大部屋。
その中央には二つの手術台があり、片方には女が、もう片方には男が固定されている。
それぞれの手術台の前には一人ずつ、化学者風の人物がいた。

从 ゚∀从「いやはや、実に楽しいねえ」

化学者風の二人の内、女の方が笑いながらそう言った。

/ ,' 3「お前さんの気持ちはよく分かるが、あまりやり過ぎると知能に影響が出るぞ」

老人の方も、やはり笑いながら話している。

从 ゚∀从「この男……内藤ホライゾンとかいったっけ?
  とにかくこいつは元から馬鹿そうだし、多少脳に影響が出ても同じことだろ」

/ ,' 3「全く、お前さんの実験台になったのが運の尽きじゃな」

从 ゚∀从「それを言うなら、あんただって若い女にえげつないことするよな。
  いい年こいてロリコンかっての」

/ ,' 3「ほっとけ」

从 ゚∀从「ま、んなことどうでもいいや。
  早くこいつらを何処かへ送るとしようぜ」

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:45:33.26 ID:0WiqQgRvO
木の板を繋いで作られた扉の前で、ノックをしつつ人を呼んでみる。

ノパ⊿゚)「すいませーん、誰かいますか!!?」

返事は無い。

と、強い風が吹いた。
それにより小屋の扉が開く。

ノパ⊿゚)「おかしいなー、留守みたいなのに鍵がかかってない……」

私は恐る恐る中を覗いてみた。

ノハ;゚⊿゚)「えっ!!?」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:46:47.49 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「ひどい……」

小屋の中は飛び散った血飛沫で赤黒く染められていた。
目線を落とすと、ズタズタに引き裂かれた死体が三つ転がっている。
そのうち一つは私と同じくらいの子どもの物のようだ。

ノハ;゚⊿゚)「うぐっ……げええええっ」

胸に込み上げてきた不快感は、胃液となって口からこぼれた。

ノハ;゚⊿゚)「はあっ、はあっ……」

口に残る気持ち悪い感触を我慢しつつ、私は小屋を後にした。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:48:28.29 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「あれは……人だよね?」

小屋から出てすぐのこと、遠くの方からこちらに近づいてくる人影が見えた。

ノハ*゚⊿゚)「らっきいぃぃぃぃぃ!!」

やっと誰かに会えたことが嬉しくて、思わず足がそちらの方へ動く。

だが、ある程度近付いたところでおかしなことに気が付いた。
私に近づいてくる人――どうやら成人男性のようだ――の胸には鍬が刺さっていたのだ。

ノハ;゚⊿゚)「それなのに平然としてるってことは……」

最悪の可能性に思い当たった私は、思わず後ずさる。

(,,゚Д゚)「ぐるああああっ!」

それを見た男は一声あげると、急に足を早め出した。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:49:53.68 ID:0WiqQgRvO
数カ月前、国中の様々な場所で奇妙な事件が発生した。
年齢、性別、ともにバラバラの人々が前触れも無く姿を消してしまったのだ。

その後、いなくなった人々は決まって数日で帰ってきた。
ただし人の皮を被った理性無き化け物となってだ。

とはいえ田舎暮しの私の身にそんな事態が襲い掛かることは今までなく、
自分とは完全に無関係な事柄だと思っていた。

正直なところ、性質の悪いホラ話ぐらいに考えていたかもしれない。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:51:11.34 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「逃げないと、小屋の人達みたいに……」

噂が本当なら、化け物達は目につく人々を見境なく殺す。
ちなみに尋常でないタフさとパワーを得ているそうだから、たまったもんじゃない。

聞くところによると、彼等のせいで滅びた町もあるという。
そんなやつに捕まれば一瞬で命を失うだろう。

ノハ;゚⊿゚)「っ!」

しまった、足がもつれて……。

ノハ;゚⊿゚)「きゃっ!!」

勢いそのままくさむらに倒れ込んでしまった。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:52:54.66 ID:0WiqQgRvO
(,,゚Д゚)「がああああああっ!」

まずい、やつの声が近くなってる。
立ち上がって逃げないと。

ノハ;>⊿<)「いつっ!!」

足がいうことを聞かない。
どうやらくじいてしまったようだ。

ノハ;⊿;)「嫌だ、死にたくない……」

股間に生暖かさを感じる。
どうやら失禁してしまったみたいだ。

(,,゚Д゚)「ぐごおおおお!」

ノハ;>⊿<)「いやあああああああっ!!!!」

私は目をつむり、一瞬後に訪れる死から目を逸らした。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:54:26.90 ID:0WiqQgRvO
ノハ;-⊿-)「……あれ?」

強烈な蹴り。
容赦無い拳骨。

予想したそれらの攻撃は行われず、代わりに頭を撫でられる感触がした。

(,,;Д;)「……」

ノパ⊿゚)「泣いてるの?」

(,,;Д;)「ころ……して……」

目の前の化け物……いや、男の人は、泣きながらそう言った。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:55:52.43 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「どういうこと?」

(,,;Д;)「おれ、かぞくころした。からだ、いうこときかない。
  ひとみる、ころしたくなる」

ノハ;゚⊿゚)「人を見ると殺したくなる? それで家族を殺してしまったって?」

男は何度も頷いた。

(,,;Д;)「くわをはらにさした。がけからおちた。でもしねない。
  これいじょうひところしたくない、だからたのむ」

ノハ;゚⊿゚)「だけど私とはこうして話せてるよね?」

(,,;Д;)「なぜかわからない。だがたのむ、ころしてくれ」

ノハ;゚⊿゚)「そんなこと言われても……」

身体がいうことを聞かずに人を殺してしまう。
彼のその言葉が事実で、例え死を望んでいようとも、私は殺しなんてしたくない。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:57:13.19 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「そんなことはできないよ」

(,,;Д;)「たのむ、すくってくれ」

ノパ⊿゚)「救う……」

その瞬間、なんとなく彼の気持ちが伝わってきたような気がした。

突然の殺人衝動により家族を殺してしまった罪悪感。
そして、次なる自分の殺人への恐怖。

ノハ;⊿;)「私、どうすればいいの?」

殺しなどしたくないけど、できれば助けてやりたい。
葛藤、葛藤、葛藤、葛藤……。

ノハ;⊿;)「……あれ?」

気がつくと、目の前の男は炎に包まれていた。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 19:59:08.29 ID:0WiqQgRvO
(,,゚Д゚)「すくってくれてありがとう」

彼は優しい表情でそう言うと、ボロボロと崩れ落ちて灰になった。

ノハ;⊿;)「今のは私がやったの?」

ちらりと自分の右手に目をやる。
熱こそ感じないけれど、赤く燃え盛る炎は確かにそこにあった。
しかも、どうやら自分の意志で炎を動かすことができるようである。

ノハ;⊿;)「怖いよぉ」

理屈は分からないが、私の身体は気を失っている間におかしくなってしまったに違いない。
どこがどう変わってしまったのかは分からないが、発火能力はその一端なんだろう。

ノハ;⊿;)「もしかして私も人を殺したくなったりするのかな?」

なぜだか自分とさっきの人の姿が被って見えてくる。
得体の知れない何かに対する恐怖は、溢れる涙を止めることを許さなかった。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:01:00.62 ID:0WiqQgRvO
Episode2、水辺にて

泣くこと数十分、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
いつの間にか右手の炎もおさまっている。

ノパ⊿゚)「……お墓、作らなくちゃね」

目の前の灰を見ながらそんなことを思った。

ノパ⊿゚)「ん?」

ふと、灰の中に銀色の光があることに気がつく。

ノパ⊿゚)「薄い金属片……」

何かの部品なのだろうか、片面にはA・Sと彫られている。
どこか引っ掛かるような感じがしたので、とりあえずスカートのポケットに入れておくことにした。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:02:25.45 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「ふいー、こんなもんかあああああああっ!!」

盛り上がった土の山に一輪の白い花。
私なりに気を使ったつもりの即席お墓だ。

ノハ-⊿-)「どうか安らかに」

私は目をつむりながら手を合わせた。

ノパ⊿゚)「よし、とりあえず歩くぞっ!!!!」

自分を奮い立たせると、私は足を動かし始めた。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:03:44.26 ID:0WiqQgRvO
しばらく歩くと、何やら水の流れるような音が聞こえてきた。

さきほど吐いてしまったたせいで口の中は気持ち悪いし、下着も排泄物で汚れている。
水があることを期待し、私は音の方へと向かった。

ノハ*゚⊿゚)「おおっ、川みっけえええええ!!」

穏やかに流れる綺麗な川。
家の近くを流れる川よりは太いものの、どことなく感じが似ているような気がした。

ノハ*゚⊿゚)「美味しいいいいいいいっ!!」

口に含んだ水は、不快な臭いをあっという間に消し去ってくれる。

ノパ⊿゚)「さてと、誰もいないよね……?」

少し辺りを見回してそのことを確認し、私はパンツを脱いだ。

ノハ;゚⊿゚)「なんか情けない気分」

12才にもなってこんなことをする羽目になるなんて思いもしなかった。
汚れたパンツを洗う私の背中は、きっと哀愁漂うものだったろう。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:05:11.43 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「さて、川上に行くべきか、川下に行くべきか」

仮にこの川が家の近くを流れているものの延長なら、川幅からいって家はもっと上流の方にある。
ただし川の上流付近ってのは、基本的に人気が少ないように思う。
だからもしかしたら、ただ道に迷うだけの結果に終わるかもしれない。

逆に川下に行けば港町のある可能性が高い。
そうでなくとも、緩やかな川の近くには人が多い。

ノパ⊿゚)「よおぉぉぉぉし、川下ルートに決定いいいいいいっ!」

結局のところ、無難な道を選ぶことにした。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:06:42.37 ID:0WiqQgRvO
沈みゆく大陽により、鮮やかな朱色に染まる海。
初めて見るそんな景色は、鳥肌が立つほど美しかった。

ノハ*゚⊿゚)「綺麗だなぁぁぁぁぁ」

偶然行き着いた砂浜でこんな光景を見れるなんて思いもしなかった。
今度はクールお姉ちゃんと見てみたいな。

ノハ;゚⊿゚)「って、感動してる場合じゃなあああああああい!
  もう夜になるってのに、泊まる場所がないじゃんっ!!」

大きく溜息をつき、歩みを再開する。

ノパ⊿゚)「んっ、あっちの方に光が見えるような?」

黒く染まり始めた潮風の中、やたら高い位置で輝く明かりを発見した。

ノパ⊿゚)「何かのタワーかな?」

好奇心に急かされ、自然と歩調は速くなった。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:08:15.13 ID:0WiqQgRvO
光源は灯台であった。
すっかり暗くなった中、悠々とそびえ立つその建物はかなり不気味だ。

ノハ;゚⊿゚)「うー、ちょっと怖いなあぁぁ。でもでも、野宿ってのも……」

大きな扉を前に、私は尻込みしていた。
自慢じゃないが、オカルトな雰囲気には滅法弱い。

ノパ⊿゚)「迷ってても仕方ないよね」

我が儘な自分に言い聞かせるよう、そう呟く。

ノパ⊿゚)「よっし、負けないもんっっ!!!!」

気合入魂、私は扉に手をかけた。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:09:46.09 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「くっらあぁぁぁぁぁい!」

扉の向こうに広がっていたのは完全なる闇。
今のところ人の気配は感じられない。

ノパ⊿゚)「うーん、電気のスイッチはないかな?」

壁に手を当てながらゆっくり歩いてみる。
その時ふと、昼間の発火のことを思い出した。

ノパ⊿゚)「あれを応用して明かりにできないかな?」

あれ以来、手から火が出てはいない。
まだよく分からない力を屋内で使うのは危険だろうし、一旦ここから出るとしよう。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:11:14.48 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「たあっ、てやあああああっ!!!」

駄目だ。
力もうと叫ぼうと、あの時のような火が出る気配はない。

ノハ;゚⊿゚)「いや、まあ、これが人として正常なんだろうけどさぁぁぁぁ!」

都合の悪い能力のことを嘆いてても仕方がない。
火を発生した時と今との違いを考えてみよう。

ノパ⊿゚)「話し相手の有無か時間帯の違い辺りが関わってそうかな?」

うーん、何か見落としている気がする。

ノハ*゚⊿゚)「そうか、精神状態だっ!!!!」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:12:46.75 ID:0WiqQgRvO
ノハ*゚⊿゚)「感情を炎に変える、実に漫画チックな展開じゃないかああああああっ!」

そうと決まれば、何か感情を揺さ振られるようなことを考えてみよう。

ノパ⊿゚)「えーっと、そういやお姉ちゃんが私の"よつばと!"を勝手に全巻売ったことがあったっけ」

ノハ#゚⊿゚)「ああああああああっ、思い出したら怒りが込み上げてきたぞおおおおおおっ!」

……あれ?
気のせいか視界が青白く揺らめいているような。

ノハ;゚⊿゚)「って、全身炎に包まれているうぅぅぅぅぅ!?」

不思議と熱くは無い。
何はともあれ、感情がこの力と関わっているのは事実のようだ。

ノハ*゚⊿゚)「折角の青い炎だし、水銀燈ごっこでもしようかなっ!!
  ちなみに私は漫画じゃ水銀燈派、アニメじゃ薔薇水晶派っ!!!!」

そう思った瞬間、ふっと火が消えた。
遊べなかったのは残念だが、これで感情の変化と炎が関わっているという推測の信憑性は強まった。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:14:13.20 ID:0WiqQgRvO
推測に従い、様々な感情と炎の相関性を調べてみた。
結果は以下の通り。

「怒り」範囲の広い青い炎。上手く制御出来ない。
「哀しみ」右手から赤い炎。ある程度自由に動かせる。

ノパ⊿゚)「ま、こんだけ分かれば充分かな」

明かりに向くのは哀しみの炎だろう。
というわけで、何かつらいことを考えながら灯台に入り直すとしよう。

にしても、前向きな感情に反応しないのはどうしてなんだろう。
なかなか使い勝手の悪い力だ。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:15:46.97 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「相も変わらず暗い」

ただし今回は明かりを出す手段を持っているため、以前より気持ちに余裕がある。
哀しみの赤い炎を出しさえすればいいんだ。

ノパ⊿゚)「哀しいこと……よっし、からくりサーカスのことでも思い出すか」

"微笑"という回を頭の中で再現してみる。
ちなみにこの回の感動指数は最終回の倍はあると思う。

ノハ;⊿;)「フランシーヌ人形ううううううっ!!
  あんたってやつは、あんたってやつはああああああああ!!」

つい泣き叫んでしまった。
同時に右手から赤い火柱が上がる。

ノハ;⊿;)「うあぁぁぁぁぁ、よく考えたらこのまま泣き続けないといけないのかああああああ!」

別の意味で込み上げる哀しみを感じつつ、私は長い螺旋階段を登り始めた。
上の階に人がいればいいんだけど……。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:17:08.96 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「明かりが漏れてる……」

螺旋階段を登ってたどり着いた、最上階にある部屋の扉。
その隙間からは僅かに光が漏れ出ていた。

ノパ⊿゚)「開けてみよう」

意を決し、ドアノブを回す。
と、次の瞬間

ノパ⊿゚)「……えっ?」

銃弾が私の胸を貫いた。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:19:28.96 ID:0WiqQgRvO
Episode3、灯台にて


ノパ⊿゚)「……えっ?」

銃弾が私の胸を貫いた。
傷口から滝のように血が溢れ出す。

ノハ;⊿;)「痛いいいいいいいいいっ!」

氷を押し当てられたような薄ら寒さが背筋を通り抜ける。
そこだけ焼石がへばり付いたように熱い右胸が、痛む。

ノハ;⊿;)「くうぅぅぅぅっ!」

歯を食い縛っても悲鳴が漏れた。
痛い、とにかく痛い。
怖い、ひたすら怖い。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:22:02.71 ID:0WiqQgRvO
('A`)「ったく、これじゃまるで俺が悪者みたいじゃねーか」

そう言いながら扉を開け、一人の男が出てきた。
手には一丁の拳銃を持っている。

ノハ;⊿;)「どうしてこんなひどいことするのおおおおおおっ!?」

('A`)「ふん、高岡の手先がよく言うよ」

ノハ;⊿;)「高岡なんて人、知らないよおおおおおお!」

('A`)「しらばっくれるな!
  俺が正気を保ててるってことは、お前は高岡お手製に相違ないだろ?」

ノハ;⊿;)「知らない知らない知らないいいいいいいっ!」

('A`)「……そこまで言うのなら、お前の話を聞いてから判断するとしよう」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:23:35.12 ID:0WiqQgRvO
ノハ;⊿;)「何にせよ、このままじゃ死んじゃうよっ!!!!」

('A`)「自分の命がどうなるかは、自分の胸に直接聞きな」

男は私の胸部を指差した。
それに従い、視線を自分の胸にある傷へとやる。

ノハ;⊿;)「穴が塞がってきてる……?」

まだ完全にというわけではなさそうだが、傷は小さくなっていた。

('A`)「その様子じゃ、どうやら本当に事情を知らないらしいな。
  ……怪我させて悪かった、とりあえず中に入れ」

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:25:17.54 ID:0WiqQgRvO
左手で右胸を抑えつつ、扉の中へと入る。
部屋は意外と広く、15畳ほどはあった。

ノハ;⊿;)「あうぅぅ」

('A`)「心配するな、恐らく数分で傷は完治する」

ノハ; ⊿ )「ず、随分と簡単に言ってくれるね」

怨みがましく見えるような表情をとったつもりだけど、伝わっただろうか。

('A`)「さて、詫びの意味も篭めてこちらの情報から漏らしてやろう」

男はそう話すと、部屋の隅にある机の引出しからカードらしき物を取り出した。

('A`)「ほらよっ」

ノハ;゚⊿゚)「高岡研究所副所長、喪神 ドクオ……?」

('A`)「"元"だけどな。そうそう、俺のことはドクオと呼び捨てにしてくれ」

ノハ;゚⊿゚)「私は素直ヒート」

('A`)「素直ヒートね、りょーかい」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:26:52.67 ID:0WiqQgRvO
2、3分して、ようやく胸の痛みが無くなった。
気持ちが落ち着いたところで、気になったことをドクオに質問してみる。

ノパ⊿゚)「高岡研究所ってのは何なの?
  さっきは高岡の手先なんてことも言ってたけど」

('A`)「高岡研究所ってのはだな、平たく言えば新兵器の開発所みたいなもんだ。
  所長はハインリッヒ高岡といい、こんな顔をしている」

ドクオは一枚の写真を手渡してきた。

『从 ゚∀从』

ノパ⊿゚)「女の人なんだ」

('A`)「中身は鬼だけどな」

そう話す声には全く冗談味がなかった。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:28:22.30 ID:0WiqQgRvO
('A`)「ここ最近、無差別に人を襲ってるやつらが出現してるだろ?
  あれは高岡の仕業だ」

ノハ#゚⊿゚)「とっ、とんでもないやつだなああああああああっ!」

私が昼間出会い、燃やした男の人。
ああいった人々を作り出すなんて、言語道断。

ノハ#゚⊿゚)「待てよっ、そういえばドクオも副所長って……」

(;'A`)「"元"だっつーの。そんなことより、この状況はまずいぞ」

ノハ;゚⊿゚)「あっっ!!」

私の怒りの炎のせいだろう、辺りには火が燃え広がっていた。

ノハ;゚⊿゚)「急いで逃げよっっ!!」

('A`)「あー、なんつーかこのまま死んでもいい気がしてきた」

ノハ;゚⊿゚)「そんなこと言わずにいいいいいいいっっ!!」

私はドクオの手を引いて螺旋階段を駆け降りた。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:30:22.24 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「あー、燃えてる燃えてる」

(;'A`)「灯台が無いせいで海難事故が起こるかもな」

大きな火柱のようになった灯台は、二度と当初の目的を果たせないだろう。
二人して溜め息をつく。

('A`)「この炎はお前の体から出ていたものだ、あれはなんなんだ?」

ノパ⊿゚)「気を失ってね、気がついたら感情に応じて炎が出るようになってたの」

(#'A`)「なるほど、何も知らないまま人体実験を施されたってことか。
  全く、あの糞女らしいこった!」

ドクオは忌々しげにそう言い放ち、拳を握り締めた。
どれだけの力が込められているのだろう、その手は小刻みに震えている。

とりあえず、ドクオはこの炎のことを知らないようだ。
比較的新しい技術なんだろう。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:35:11.64 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「聞きたいことがいくつかあるんだけど、いいかな?」

('A`)「ヒートには負い目があるからな、なるべく答える」

ノパ⊿゚)「まず、どのようにして人間を襲いたくなる人達が生み出されたの?」

('A`)「あれはだな、これを使うんだ」

ドクオがズボンのポケットから取り出したのは薄い金属片だった。

ノパ⊿゚)「もしかしてこれと同じやつ?」

私は灰の中から拾った金属片をドクオに渡した。

('A`)「彫られたアルファベット以外は同じだな。
  ほら、俺の持ってるチップにはハインリッヒ高岡のイニシャル、H・Tが刻まれてるだろ」

ノパ⊿゚)「私の持ってるのはA・Sだね」

('A`)「ま、お前が持っているチップについては後で考えるとしよう」

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:39:14.31 ID:0WiqQgRvO
('A`)「で、このチップの正体だが、早い話が脳に直接埋め込む洗脳装置みたいな物だ」

ノパ⊿゚)「つまりそれが脳をどうこうして人を殺させるってこと?」

('A`)「ああ、ただしチップを埋め込まれた者同士では殺意が湧かないようになっているらしい。
  元はといえば軍に売り込む目的で作った物だ。
  用途を考えれば当然の機能だな」

ノハ;゚⊿゚)「洗脳して戦わせるなんて、なかなかえぐいことするね!!!!」

('A`)「ただ、俺がいなくなった時点では色々と問題があった。
  人体実験は望むところ、ってなぐらいにな」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:40:52.92 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「詰まるところ高岡ってやつは、拉致した人間で実験をしてるってこと?」

('A`)「ふーん、幼女の割に察しがいいな」

ノハ#゚⊿゚)「よっ、幼女って誰がだああああああ!
  私は12才だもんっ!!」

(;'A`)「うぉい! 火ぃ出てるって、危ない!」

ノハ;゚⊿゚)「むうっ……」

('A`)「あー、うん、12なら少女の範疇だな。にしては身長が低い気もするが」

ノハ;⊿;)「背のことは気にしてるんだよおおおおおお!」

私の右手からはかつて無いほどに大きな火柱が上がったのだった。

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:42:54.38 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「さて、気を取り直して次の質問。
  えーっと、私の傷が治ったのはどうしてなの?」

('A`)「そのことを話す前に一つ言っておきたいことがある」

ノパ⊿゚)「なあに?」

('A`)「俺の頭にはあのチップが埋め込まれている」

ノパ⊿゚)「そのドクオが正気でいるってことは、私にも?」

('A`)「……やっぱりお前、馬鹿ではないな」

これもドクオなりの褒め言葉なんだろうか。

とにかく、これで私は一般人に近づけないってことになる。
とうとう恐れが現実と化してしまった。

('A`)「んで、チップの効果ってのは殺意の増加だけじゃないんだわ。
  もう薄々感づいているとは思うが、人間の持つ治癒能力を高めることができる」

ノパ⊿゚)「時代は進んだねー」

(;'A`)「呑気過ぎだろ、常考」

当たり前だが私はかなりのショックを受けている。
ある程度の覚悟をしていたからよかったものの、そうでなければ間違いなくパニックに陥ったろう。
この言動はそれを紛らわすための、心の防衛策みたいな物だ。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:45:13.94 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「最後の質問……これは答えたくないならそれでいいけど、ドクオはなぜ研究所を抜けたの?」

('A`)「無理矢理の洗脳について、お前はどう思う?」

ノパ⊿゚)「そりゃ気に食わないよ」

そう、気に食わないに決まっている。
あそこまで哀しそうな人を生み出す発明なんて、絶対に間違ってる。

('A`)「俺もそう思い、変な研究を始めやがった糞女と対立した。
  結果、一般人とは話せない体にされてポイだ。やってらんねーよ」

ノパ⊿゚)「そう……なんだ」

('A`)「だから人目を阻むため、月一の点検以外は無人であるあの灯台に篭ってたってわけだ」

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:47:33.78 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「ねえドクオ、よかったら私と一緒に来てくれない?」

('A`)「一緒に?」

ノパ⊿゚)「私は高岡の暴挙を力ずくでも止めて、チップを埋められた人を元に戻させたいと思う」

私はドクオの話を聞いたときから考えていたことを言った。

(;'A`)「ばっ、相手は兵器研究所だぞ!?
  お前一人じゃどうしようも無いだろ」

ノハ#゚⊿゚)「だから黙って隠れ住めっていうの!!?
  そんなの変、それじゃおさまらないんだよ!!!!」

周囲に青い火が広がる。

ノハ#゚⊿゚)「私は子どもだし、専門的なことは何もわからないよ?
  でもね、平和に暮らすことが許されない人がいていい訳がないっ!!!
  それだけは、確信してるからっ!!!!」

('A`)「……」

ノハ#;⊿;)「綺麗事かもしれないけど、ほんとにほんとにそう信じてるからっ!!!!!」

何故だか涙が止まらない。
一気に言葉をまくし立てたためか、息も荒くなってしまった。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:49:54.28 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「私が言いたいことは、それだけ」


一瞬の沈黙。


('A`)「……素直ヒート」

ノパ⊿゚)「うん」

('∀`)「共に闘おう」

ドクオは私に手を差し出してきた。
初めて見せる笑顔までセットだ。

ノパー゚)「うんっ!!!!」

私は彼の手をとり、最大限の笑顔でそれに答えた。

ざわざわと静かに響くさざ波は、まるで私達を優しく見守っているかのようだった。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:55:03.77 ID:0WiqQgRvO
これで3話は終わり。今日はあと1、2話投下する

それと、義妹保存してくれたって人ありがとう。素で嬉しい


名前「ばつ」
   __
  〃  ヽ
 | ノノノノノノ
 |l|*゚ー゚ノl
 |_/、_Y_ハ
  とんノハつ
   しソ

語尾は「~のです」もしくは「~なのです」。

4話目から登場するキャラ。
恐らくブーン小説じゃ使われたことのないAAなんで、一応紹介。

ちなみに文章内で使うばつの一行AAは|l|*゚ー゚)(勝手に決めちゃったけど、まあいっか)。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 20:59:53.52 ID:0WiqQgRvO
Episode4、高岡研究所にて


从 ゚∀从「さて、こいつはどう動くかな」

ハインリッヒお姉様は小さなモニターを覗き込んでそう呟いた。
そこには二つの点が表示されており、片方はヒート、もう片方はブーンという人の位置を示すらしい。

从 ゚∀从「早くここに辿り着けよー」

最近こればっかりだ、少しは私にもかまって欲しい。

|l|*゚ー゚)「お姉様、またブーンとヒートの観察なのですか?」

从 ゚∀从「ああ、なかなか面白いぞ」

お姉様は画面から目を離さずにそう答えた。

|l|*゚ー゚)「でもでも、ばつはもっと楽しいことを知っているのです!」

从 ゚∀从「ふん、どうせくだらない人形ごっこだろ?」

|l|;゚ー゚)「そう言われると何も言い返せないのです……」

後ろ手に隠した人形には、どうやらお姉様の注意を惹くだけの力は無いようだ。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:01:25.57 ID:0WiqQgRvO
注意を惹くことを諦め、私は自室へと戻った。

|l|*゚ー゚)「お姉様は変わってしまったのです」

きっかけはヒートとブーンを手術したことだろうか?
違う、荒巻とかいう老人と絡み始めた一年前からお姉様は変わり始めた。

|l|*゚ー゚)「……昔はあんなに優しかったのに」

孤児だった私を引き取り、実の姉のように接してくれた。
15も年が離れているのに、本気で遊んでくれた。

大好きな大好きなハインリッヒお姉様……。

|l|*゚ー゚)「……」

過去の思い出を求め、私はアルバムをめくり始めた。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:03:06.48 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「これはばつが3歳になった時の誕生日なのです」

今は8歳だから、5年前のことになる。
私とお姉様とで祝った初めての誕生日だから、今だによく覚えていた。

|l|*゚ー゚)「お姉様のケーキ、苦かったのです」

普段馴れない料理をしたからなんだろう。
薬っぽい味に驚いた私は、思わず泣いてしまったっけ。

|l|*゚ー゚)「終いにはお姉様まで泣き始めて、大わらわだったのです」

だけどひたすら楽しかった、生まれて始めて味わうあたたかな誕生日。

ちなみにその時にプレゼントとして貰った星の髪飾りは、今でも現役さんだ。

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:04:29.55 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「あー、ドクオさんなのです!」

ドクオさんは半年ほど前までこの研究所に勤めていた男の人。
一見恐そうだけど、本当は凄くいい人。

|l|*゚ー゚)「この写真ではばつとお姉様とドクオさんとで水遊びしてるのです」

私は泳ぐのが苦手だから、お姉様とドクオさん合作の全自動アヒルさんボートで遊び回ったっけ。
懐かしい、大切な思い出。

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:06:51.05 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚-゚)「なんでこんな写真がここに……?」

お姉様と荒巻が並んで写った写真。
荒巻、本当に嫌なやつだ。

私は写真を抜き取ると、ごみ箱に放り投げた。

|l|*゚-゚)「お姉様を騙して変な研究させ、挙げ句ドクオさんを追い出して……」

詳しいことは分からないが、荒巻は人間の心について調べているらしい。
苦痛とか憎しみとかそういう嫌な気持ちが大好きみたい。

|l|*゚-゚)「お姉様はなんであんなのに騙されてるのでしょう……」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:08:10.83 ID:0WiqQgRvO
最後の写真になった。
それはお気に入りの写真を入れるためについた、豪華なビニールポッケに入っている。

|l|*゚ー゚)「お姉様から人形をもらった時の記念なのです」

それは、私とお姉様とで撮った初めての写真。
なかなか心を開かなかった私に、お姉様が手作りの人形をくれた時に撮った。

|l|*;ー;)「人形遊びは……くだらなくなんかないのです……」

なんせ私達の心が繋がったきっかけなんだ。
それがくだらないなんて、そんなことある訳がない。

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:09:37.22 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「うーん、お姉様を元に戻すにはどうしたらいいのですかねー」

荒巻を引き離せれば最良だけど、あいつはなかなか隙を見せない。
なら、次に手っ取り早いのはヒートとブーンの削除だろう。

|l|*゚ー゚)「うん、それしかないのですよ。
  夜中にあのモニターと武器を持ち出して、実行してやるのです」

私達の幸せのためだ、二人には悪いがやらせてもらおう。

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:13:03.81 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「抜き足、差し足、忍び足」

暗がりの中、モニターをそっと探す。

|l|*゚ー゚)「おっ、すんなり発見できたのですよ」

机の上に放置してあったのは幸いだった。

さて、次は武器だ。
私に上手く扱える物となると、軽いことが必須条件になる。

|l|*゚ー゚)「これとこれなんかよさそうなのですよ。あとはこれも大事なのですね」

お姉様が開発したチップのによる殺意を打ち消す機械を初めとし、必要な道具をカバンに詰め終えると、
私は出口へと向かいだした。

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:15:09.10 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「さーて、もう後戻りはできないのです」

くるりと振り返り、ドーム型の研究所をしみじみと眺めてみる。

|l|*゚ー゚)「大丈夫、また笑って過ごせるのです」

微笑のテレサばりの笑みを浮かべ、私は歩き始めた。
晴れてるのに月のない空は、縁起がいいのか悪いのか。

|l|*゚ー゚)「なんにせよ、ばつがやれることに全力を尽くすのみです!」

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:23:14.06 ID:0WiqQgRvO
Episode5、獣道にて


私達は浜辺にあった洞窟で寝泊りし、翌朝には高岡研究所に向けて出発した。
ただし人目を避けるため、獣道を通っている。

ノハ;゚⊿゚)「疲れたあぁぁぁぁ」

(;'A`)「そろそろ休むか」

以前の休憩を終えてから現時点までは一時間ほどしかたっていないが、道が悪いため疲れは大きい。
思わず平らな岩の上に寝転がってしまった。

ノパ⊿゚)「極楽ですなー」

('A`)「そーだな」

時折山鳥のさえずりが聞こえてくる。
普段は騒々しいその声も、今はなぜだか心地よかった。

ノパ⊿゚)「なんか焼き鳥が食べたくなった!!!!」

(;'A`)「火を発生させられるやつが野鳥を前にそう言うと、言葉の重みが違うぞ……」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:24:30.75 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「そういえばさ、チップが殺意を芽生えさせる条件を詳しく教えてくれる?」

('A`)「条件っていうと?」

ノパ⊿゚)「誰にどの程度近づいたら作用するのか、それぐらいは知っときたくて」

('A`)「ふむ。まず知っての通り、チップが殺意を芽生えさせる対象は一般人全てだ。
  発動するのは対象から20メートルぐらい離れた辺りから。
  ちなみに近ければ近いほど殺意は増す」

ノパ⊿゚)「そんなもんか」

距離、20メートル。
対象、チップの無い人間。

対処法といえば、自分が誰かに殺意を持った気がしたら、進む方向を変えて人を避けるぐらいか。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:27:19.12 ID:0WiqQgRvO
('A`)「さて、そろそろ」

ノパ⊿゚)「あっ、最後にもう一つ!!!」

('A`)「どうした?」

ノパ⊿゚)「このチップが言語能力を奪う、なんてことはある?」

('A`)「いや、俺が知る限りはそんな機能無いと思うぞ。
  どうしてそんなことを聞いたんだ?」

ノパ⊿゚)「浜辺で見せたA・Sって彫られたチップを埋められた人が、なんか片言だったから」

('A`)「A・S……ああ、もしかしてあいつか?」

ノパ⊿゚)「あいつ!?」

('A`)「荒巻スカルチノフっていう、マッドサイエンティストだ。
  ハインリッヒとつるんでるんだが、あの爺ならそういうこともやりかねん」

ノハ;゚⊿゚)「うわー、まだ敵がいるわけ!!!」

とりあえず荒巻スカルチノフという名前は、記憶の中に留めておくとしよう。

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:29:20.97 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「それじゃあ体力も回復したし、出発しますか!!!」

('A`)「おう!」

私達はどちらともなく立ち上がり、前進を再開しようとした。
が、次の瞬間

「お命ちょうだいなのです!」

そんな甲高い声と共に、頭上から降り注ぐ網状の鉄線。
それに絡みとられ、私達は地に伏してしまった。

ノハ;゚⊿゚)「なっ、何事おおおおおお!!?」

|l|*゚ー゚)「ふっふっふ、まんまとひっかかったのです!
  やっぱりばつはお姉様の次に天才なのです!」

見上げた先には、木の枝に掴まった女の子がいた。

(;'A`)「ばつ! ばつじゃないか!」

どうやらドクオはこのばつという女の子のことを知っているらしい。
ひどく驚いた様子だ。

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:30:59.94 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「ドクオさん、お久しぶりなのです。
  安心してくださいね、ヒートを殺したらすぐに解放するのです」

(;'A`)「殺すってな……何があったかは知らないが、そんなことは言うもんじゃないぞ」

|l|*゚ー゚)「ばつは本気なのですよ?
  ああ、もしかしてドクオさんもこの女に騙されているのですか?
  心配無いのです、すぐに私が正気にしてあげるのです」

ばつはそれだけ言うと、木の枝から飛び降りてナイフを取り出した。

(;'A`)「おい、ヒートからも何か言ってやれよ!」

ノハ;゚⊿゚)「えーっと、平和的に解決する気はない?」

|l|*゚ー゚)「……申し訳ないのですが、私の幸せのために」

ばつは私の目の前でしゃがみ込み、ナイフを構える。

|l|*゚-゚)「死ね」

言葉と共にナイフが振り落ろされた。

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:33:34.31 ID:0WiqQgRvO
|l|;゚ー゚)「えっ……」

彼女の持つナイフは、私に当たる寸前に刃の部分が消滅した。
私の右手から出る哀しみの炎が溶かしたのだ。

ノパ⊿゚)「この鉄線も」

私は右手をかざして鉄の網を焼き切った。
それを見たばつは少し後ずさる。

|l|;゚ー゚)「アミアミが破られるとは予想外なのです」

('A`)「ばつ、これで妙な真似は諦めてくれるか?」

|l|*゚ー゚)「いえ、ばつにも覚悟というものがあるのです」

ノパ⊿゚)「覚悟と言われても……そもそもどうして私を襲ってるわけ?」

|l|*゚ー゚)「それはですね」

そこで一旦、言葉を区切る。
かと思うと、鞄からウサミミのようなものを手早く取り出した。

|l|*゚-゚)「邪魔だから」

頭にそれをつけ、一足跳びで迫ってくる。
小さな身体からは想像もつかない勢いだ。

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:36:17.94 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「やあっ!」

腹目掛けてのストレート。

ノハ;゚⊿゚)「ぐっ!!」

強い衝撃を感じる。
続けて繰り出される胸へのハイキック。

ノハ;゚⊿゚)「きゃっ!!!!」

(;'A`)「ヒートっ!」

私は吹き飛ばされ、地面へと倒れ込んだ。

|l|*゚ー゚)「あはははははっ、流石はお姉様特製の筋強化ウサミミ!
  こいつ、手も足も出ないのです」

笑いながら踵落としをしてくる。

ノハ;゚⊿゚)「くっ!!!」

横に転がって辛うじて避けられた。
一瞬前まで私の顔の下にあった土は、大きくえぐり取られている。

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:38:06.69 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「目くらましっ!!!!」

地面に向けて火を放ち、土を噴き上げる。

|l|;゚ー゚)「なっ!」

ばつが怯んだ隙をつき、私は彼女と距離を置いた。

|l|*゚ー゚)「お姉様とドクオさんをたぶらかす悪魔の癖に、生意気なのです」

ノハ;゚⊿゚)「だーかーらー、そもそもあなたのお姉さんが誰なのかすら知らないんだけど!」

('A`)「ハインリッヒだ」

ノハ;゚⊿゚)「ええええええっ!!? んな展開いぃぃぃいいい!!!?」

|l|*゚ー゚)「全く、熱苦しい女なのです」

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:40:25.52 ID:0WiqQgRvO
|l|*゚ー゚)「にしても、こいつなかなかしぶといのです。
  こうなったら奥の手を使うのです」

ばつは黒い球状のものを鞄から出した。

(;'A`)「ばっ、それは洒落にならな……」

|l|*゚-゚)「さよなら」

彼女は冷たく言い放ち、球を私の方へと投げつけてきた。
ドクオの反応からいって、恐らく触ってはいけないような武器なんだろう。

ノパ⊿゚)「たあああああああっ!!!!」

私は炎を出し、自分に触れる前に球を焼き付くそうとした。

(;'A`)「ばっ、それは爆弾だ!」

ノパ⊿゚)「えっ!!??」



白い閃光が視界を埋め尽くした。

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:45:03.63 ID:0WiqQgRvO
目を醒ますと、そこは見慣れない岩場だった。
先の衝撃で吹き飛んだのだろう。

ノハ;゚⊿゚)「あつつっ」

体中がヒリヒリするものの、動けないほどの怪我はしていないようだ。
チップのおかげなのだろう。

そうだ、ドクオとばつはどうなったのだろうか。
辺りを見回してみる。

|l|*;ー;)「あうぅ……」

視界に入ってきたのは、岩の下敷きになったばつの姿だった。

どうやら岩壁に激突し、落ちてきた数個の岩に潰されたらしい。
命に別状はなさそうだが、1人では抜け出せないのだろう。

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:47:52.59 ID:0WiqQgRvO
ノハ;゚⊿゚)「ちょっと、大丈夫っ!!??」

|l|*;ー;)「痛いよぉ……」

ノパ⊿゚)「たあああああああっ!!!!」

目の前の痛ましい姿を見たことによる哀しみを、そのまま炎へと転換する。
岩の上部は一瞬にして消え失せた。

ノハ;゚⊿゚)「よっこいしょっと」

軽くなった岩を慎重に動かす。

ノパ⊿゚)「よし、これで大丈夫!!!!」

|l|*;ー;)「ふっ、ふえぇぇぇん!」

安心して気が緩んだのか、ばつは声を上げて泣き始めた。

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:50:55.97 ID:0WiqQgRvO
ノパ⊿゚)「ねえ、そのままでいいから聞いて」

|l|*゚ー゚)「……」

無言で頷く。

ノパ⊿゚)「ばつがどうして私を狙うのかよく分からない、分からないけどさ……
  人を殺して得る幸せなんて、脆いと思う」

|l|*゚ー゚)「たとえ脆かろうと間違っていようと、ばつの幸せのためにはああするしか……」

ノハ;⊿;)「あんな哀しそうな顔をしてたのも、幸せを得るためだっていうの!!?」

|l|*゚ー゚)「哀しそう……?」

ノハ;⊿;)「さっきずっと、ばつの目が哀しそうなの。
  一見笑っているようでも、目だけは!!!!」

口元が狂った笑みを浮かべている間も、この子の瞳は憂いを秘めていた。
まるで良心の呵責を耐え忍ぶかのように。

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:53:22.11 ID:0WiqQgRvO
|l|* - )「ほんとは分かってた、自分がよくないことをしていることに。
   あなたに非が無いことだって、心のどこかで……」

ばつはうつむきながらそう呟いた。

|l|* ー )「あなたは不思議な魅力を持った人なのです」

|l|*^ー^)「私の負けなのですよ、ヒート」

ノパー゚)「さいですか」

彼女の笑顔は心地よく、それを見ていると少しくすぐったい感じがした。






76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:21:21.03 ID:0WiqQgRvO
ExtraEpisode、パラレルワールドの寝室にて(もしモニターが机の上に置かれていなかったら)


|l|*゚ー゚)「むー、モニターが見つからないのです。
  もしやお姉様のお部屋にあるのですかね?」


|l|*゚ー゚)「という訳で、やって参りましたエルダーシスタールーム!」

从;゚∀从「ちょっ、こんな深夜に何の用だ?」

|l|;゚ー゚)「ばつ一生の不覚、興奮して大声を出してしまいました」

从 ゚∀从「興奮……深夜……寝室……」

|l|;゚ー゚)「おっ、お姉様ぁ!? 何か鼻息が荒いような……」

从*゚∀从「嬉しいな、ばつにもそういう気があったなんて」

|l|;゚ー゚)「確かにかまってほしくて起こした行動なのですが、
  なにやら方向性が違ってきてるような気がするのです」

从*゚∀从「おいで、今夜は可愛がってやるよ」

|l|;゚ー゚)「アッーーーー!」

BadEnd

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/16(日) 21:55:09.28 ID:0WiqQgRvO
ExtraEpisode、ばつの鞄


ノパ⊿゚)「一つ気になったんだけど」

|l|*゚ー゚)「もしかして鞄のことなのですか?」

ノパ⊿゚)「うん、見た目は小さいのによく色々なものが入るなーって思って」

|l|*゚ー゚)「ふっふっふ、実はこの鞄には秘密があるのです!」

ノハ;゚⊿゚)「うわっ、中に入ってるものが尽くミニチュア!!?」

|l|*゚ー゚)「口の部分にスモールライトのような装置が埋め込まれてるのです」

ノパ⊿゚)「あははは、ばつは冗談がうま……」

|l|*゚ー゚)「……」

ノハ;゚⊿゚)「……まじっすか」

|l|*゚ー゚)「ま、この話の舞台は現代日本ではなさそうなので、こういうのもありなのです」

ノハ;゚⊿゚)「それなら、ローゼンやらからくりやらは言っちゃいけない事柄だったんじゃ……?」

|l|*゚ー゚)「んー、まあ細かいこと気にする人は長生きできないのです」

ノパ⊿゚)「そういうもんかねぇ……」
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